これまでの短歌

内田康夫の作品
内田康夫の落款
早坂真紀の作品
早坂真紀の落款

夏

2017年7月18日

  • 芝を刈る 音のうるさく 庭見れば 妻は目を閉じ 夏を吸いをり
  • 人がみな 我より偉く 見える日よ、 いまならわかる 啄木のこころ
  • 目覚めれば まだ明け切らぬ 梅雨寒に 時計の針の 重なる音する
  • 無限とは どこまで行けば 無限かと またたく星を 見ていて思う
  • すきあらば ところ選ばぬ 雑草よ そのたくましさを 夫に分けて……
  • 芝刈りの 音の響けし 夏の朝 まだ干ぬ露の 緑の匂いよ

2017年7月3日

  • あじさいの 葉を這いながら かたつむり 梅雨を楽しめ 勝手に楽しめ
  • 哀しみを 雨が流して 夕まぐれ ほのかに淡き あじさいの花
  • 深くなる 緑に埋もれし 我が家よ あるじなしとて 我を忘るな
  • ハルゼミの 降りそそぎたる 梅雨晴れに 森に迷いし 一人旅きて
  • あじさいの 色合い未だ 見せもせず 固きつぼみの 肩よせあって
  • ひとむらの むらさきつゆくさ 露まとい 朝日のあたる それまでのこと

2017年6月15日

  • しらじらと また始まるか 長き日よ 窓という額の 絵画みながら
  • 足下を トカゲのチロリと 横切りて 二度目の夏を 迎えてため息
  • 月の夜の 静寂すぎて 妖しくて 空に向かいて 吠えたくなりぬ
  • これからの 夢はたくさん あったのに 時が止まった 夫の書斎
  • 倒木の 朽ちたる幹に 苔むして 若木はぐくむ 情け羨む
  • 風凪いで リンとも鳴らぬ 風鈴に 鈴虫の来て リンリンと鳴く

2017年6月1日

  • 突風に 吹き寄せられたる 花びらの 去年の枯れ葉と 肩寄せ合う
  • 老けたなと 妻の横顔 見つめれば 同じ時間を ぼくも生きてた
  • 目の冴えて 暗き夜空に 星のごと 夜間飛行に 疼く旅ごころ
  • 人生に 一度は必ず あるはずと これから起きる 奇跡まちをり
  • 涙より 笑いが薬と 聞いたから 今日も夫と クスリクスクス
  • 窓際の 瓶に一差し レンギョウの 影の動きて 黄昏を知る

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春

2017年5月12日

  • この先を どうしようかと 思いつつ 途絶えたままの 孤り行く道
  • わが著書の タイトル聞けば 目に浮かぶ あの日あの頃 取材の先々
  • 新年を 迎える汽笛に 船上で 妻の背中を 抱いた思い出
  • 明日こそは 病いよ治れと 願いつつ 目覚めてみれば 明日はまた明日
  • 突然に 天丼の味 思い出し ここを抜け出し 食いに行きたし
  • 裏庭の 木イチゴの 白き花 思い胸はずませた ジャムの算段
  • 離れれば なぜか哀しく そばにいれば 早く逃げたい 夫の荒れる日
  • カーテンを 引く手を止めて おぼろ月 夫も見てるか 同じ心で
  • あと一度 一度でいいから 抱きしめて 片手でなくて 両手で強く
  • フルートの 運指もわすれ 音も出ず ゆとりなきまま 過ぎた時間よ

2017年3月21日

  • 思えども 思い通りに いかぬ腕 なぜこのやまい なぜこのやまい
  • ぼくはまだ 生きているのに心電図(死んでんず) 折れ線グラフの 今は谷底
  • 車椅子 目の位置低く なりし今 見えぬものより 見えるもの多し
  • 苦しげに また楽しげな 夫(つま)の顔 夢路にまどうか うたた寝のとき
  • 「おはよう」と ドアから顔を のぞかせば 待ちかねてたと はじける笑顔
  • うれしげに 「あのね、ゆうべね…」 夢みたと ことばを探して 「うれしかった」と

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