内田康夫からのご挨拶

 ご無沙汰しております。内田康夫です。
 2015年の夏、僕は脳梗塞という厄介な病気に罹ってしまいました。それで毎日新聞に連載中の「孤道」を、休載せざるを得なくなりました。
 現在は療養中ですが、長い文章を執筆するには、まだまだ時間がかかりそうです。しかし「孤道」は入院中にも頑張って書いた約500枚もの作品。このまま眠らせておくのにしのびないと、未完ではありますが5月に単行本で出版し、完結編を一般公募することになりました。(詳しくは「『孤道』完結プロジェクト」のHPをご覧下さい)
 療養中ということにストレスを感じ、小説を書けないことにかなり苛立っておりましたが、僕は短歌が好きであったことを思い出しました。そうだ! 小説は無理でも、短歌だったらいけるかもしれない。そう思ったら、気持ちは少し楽になりました。
 勿論いずれは小説を書くつもりです。いつまでも浅見光彦を遊ばせておくわけにはいきませんからね。それまではカミさん(早坂真紀)に協力してもらって、短歌を詠む……そう、短歌でリハビリというわけです。
 少女時代から詩が好きだったカミさんは、僕を助けるうちに「短歌」というものに目覚めたようで、自分でも少しずつ詠んでいるようです。
 こんな僕たちのことを知って、短歌の老舗雑誌である『短歌研究』と、旧知の講談社の編集者が一緒になって、この「夫婦短歌」の特設サイトを設けるという話に繋がったのです。
 言葉での表現から遠ざかっておりましたので、我ながらまだまだの感はあります。健康だったころのレベルに、早く戻れるように努力しますので、どうか温かい気持ちで見守ってくださいますようお願いいたします。 内田康夫

早坂真紀からも一言ご挨拶

 夫の作品を愛してくださる方々には、内田康夫の長引く休筆を心苦しく申し訳なく思っております。
 私は夫の小説の才能を高く評価しておりましたので、この度の病気が返す返すも残念です。できることなら代わってあげたいくらいです。
 本人は小説が書けないということに、かなり苛立っておりました。そのたびに私は本を見ながら百人一首の頭の5文字を詠み、続きを詠ませておりました。夫は子どものころに覚えたという百首全部を詠むどころか、歌の詠み人やその背景まで説明してくれるのです。おまけにお見舞いにいらしてくださる編集者に、ダジャレを折り込んだ歌を聞かせたりしておりました。
 以前に夫が『歌枕かるいざわ』という歌集を出版したことを思い出し、ひょうたんから駒ではありませんが、編集者の方が、いずれ小説を書くまでのリハビリを兼ねた短歌のサイトを作ろうとおっしゃってくださったのです。夫婦で……という申し出にはギョッ!でしたが。
 私は子どものころから詩は書いておりましたが、短歌はまったくの素人です。でもこのサイトをご覧になって「これなら自分だって」と思う方が出てくるかもと、自分に言い聞かせております。でもあまりにお目汚しになってもと、歌人の先生に講評していただいたりしました。
 努力して詠みますが、詩とはまったく違う世界のこと、どうなりますことやら。よろしくお付き合いくださいませ。 早坂真紀